忘年会に乗ろう
まず第一に首相は一番大きな派閥の長老たる国会議員から選ばれる。
アメリカでは大統領の多くが州知事から選ばれている。
B大統領はT州知事、C大統領はA州知事、K大統領はJ州知事であった。
国政の中心にいた人々よりも、地方行政で実力を蓄えたベテランが中央へと登場している。
日本で言えば、県知事が直接首相に選ばれるようなものであるが、今の日本にそのようなことが起こる仕組みは存在しない。
また日本の閣僚は派閥から提出された、当選回数を基準にリストされた名簿から選ばれる。
どんなに実力のある人物でも初当選した「若造」など相手にされない。
その結果、首相も閣僚も年寄りばかりとなる。
イギリスのB首相、ロシアのP首相がそれぞれ46歳。
B大統領がやや年長で53歳である。
日本ではこの年齢ではまだまだ若造の分際であろう。
ところで会社の経営はどうだろうか。
これも政治とまったく変わらないように思われる。
企業に置いては有権者に代わるものが株主、議会に代わるものが取締役会、首相に代わるものが社長で閣僚に代わるものが執行役員である。
また司法に代わるものとして、監査役会と法令遵守をチェックするコンプライアンス(法務部)がなくてはならない。
ここに三権分立が成立し、コーポレートーガバンナンス(企業統治)の体制が確立される。
日本の企業が、このような形をとっているだろうか。
「形」は似ている。
しかし、実際には機能しない。
なぜなら、社長が全人事権を握り、株主が取締役会を通じて社長の人事権を持つ、すなわちクビにもできるし、報酬も決められる、ということが成立しないからである。
監査役さえ、人事を社長に握られている。
通常監査役に使命されるのは、「取締役に昇格できなかったけれども大きな貢献をした社員」である。
経営の実態を包み隠さず株主に伝えるという努力(ディスクロージャー)もおざなりにされてきた。
アメリカでは「隠すことは罪」で、不祥事を隠せば牢屋にぶち込まれる。
日本では最近ではMB自動車のリコール隠蔽問題にあるように、隠せるものは「できるだけ隠せ」という価値観が支配的である。
普遍性はどちらに?このようにアメリカ型資本主義と日本型資本主義は、同じ資本主義と言いながらも大いに異なる。
日本型資本主義、もしくはその統治の仕方は、組織がまだ極めて小さい状態、すなわち親分子分の関係でやって行ける状態のときに有効だった。
また国民経済としてせいぜい一人当り国民所得が1万ドル以下の開発途上の時代には、それなりに適合したシステムだったのかもしれない。
生産の主体が農業から工業の時代も、これでもやってこれたのかもしれない。
しかし、今後生産の主体が知的資産になるとき、「親分子分」の論理ではまったく立ち行かないということは論をまたない。
民主主義。
これは与えられるものではない。
自分たちで作るものであると思う。
世界は民主的になってきているが、未だ全世界が民主国家になったわけではない。
私が教えているP大学国際経営大学院には世界各国から学生が来る。
2000年1月の講義の時に、私が教科書の一つにしているMITのR・T教授が書いた「資本主義の未来」という本からの引用で「資本主義の競合者である、ファシズムも社会主義も共産主義もみななくなった」という一説を引用したところ、モスクワから来ていたDがさっと手を挙げた。
「M教授、それは違いますよ、共産主義はまだ決して死んではいませんよ」と言った。
するとイスラエルから来ていたNも手を挙げた。
「M教授、私が育ったのはイスラエルのキブツですが、キブツというのは社会主義の世界です」。
Dは私の授業(30時間)を聞いた後の感想として、「これまで資本主義について良く分かっていなかった。
株式に投資することなどは生産という実業に対して虚業のようにしか思えなかったのが、教授の講義を聴いて、私の認識は浅はかなものであり、資本主義のメカニズムについて初めて理解し、そしてそれが決して悪いものではないということが分かりました」と述べてくれた。
彼は卒業後モスクワに帰るつもりだという。
Nはまた私の講義を「これまで得た講義の中で最も感銘した講義であり、それはすべての話が実体験に裏打ちされたものだったからだ」と言ってくれたが、すでに彼の兄弟がカリフォルニアに移民し、成功しているので、アメリカへの移民を真剣に考えているようだった。
Nの奥さんは日本人だ。
このように、たとえベルリンの壁が崩壊して10年たっても、決して世界のすべてが民主主義になったのではない。
しかし日本のように一見民主主義国で、実際には民主主義が十分機能していない国も多い。
私は「民主主義の確立を願うこと」が決してアメリカの独善を他の国や民族に押し付けるものではないと考えている。
アメリカは世界中から集まった人々により形成されている。
決して一つの民族が作ったシステムに他の民族が服従している国ではない。
この国で開発された社会システムは、完璧ではなくとも、世界のより多くの人々に受け入れられる可能性を持つ「普遍性」が備わっていると確信する。
開放社会と閉鎖社会開放性があるかないかM・L・K牧師は1963年8月28日の人種差別反対のためのワシントン大行進で「私には夢がある、いつの日か、かつての奴隷の息子たちと、かつての奴隷主の息子たちがともに同じテーブルにつくという夢が」と演説した。
この「私には夢がある」という演説はアメリカでも最も有名な演説である。
今その夢は実現している。
B政権には黒人の閣僚も日系人の閣僚もいる。
アメリカを代表して外交にあたるP国務長官は、肌の色が濃いジャマイカから来た移民である。
私が生まれる10年前まで、私たちの父母たちは第二次世界対戦の渦中にいた。
日本はドイツのナチスやイタリアのファシストと手を組み、朝鮮半島や中国を植民地化し、アメリカと戦っていた。
その日本人の息子である私が、今アメリカで、中国人、韓国人、ユダヤ人の息子や娘と一緒に会社を作り、固い信頼感をもって一緒に仕事している。
かつての奴隷の息子たちと奴隷主の息子たちも、銃を向け合った親の子供たちも、いま同じテーブルに付いている。
人間は過ちを犯す。
民族は時に憎み合い、銃をもって向かい合う。
一方、人間にはお互いを許し合う才能も備わっている。
そして憎しみ合うことよりも、許し合うことにより、我々ははるかに生産的な社会を作ることができる。
私がここに述べたことは「観念」ではない。
明白な「事実」である。
人が「活き活きと働く」上に重要なのは、社会の民主性に加えて開放性だと思う。
アメリカは極めて開放的な社会だと思う。
1年過ごしたブラジルも、開放的な社会のように感じた。
しかし、日本は最も閉鎖的な社会の一つであると思う。
それが日本の発展を阻害しているばかりか、日本国民自体が「活き活きと働く」ことを制約しているように思えてならない。
いくつかの統計がある。
アメリカに住んでいる外国人の比率は10パーセント以上。
フランスは10パーセント。
ドイツ、イギリスは6パーセント。
日本は0.6パーセント。
日本が過去10年間に受け入れた難民の数1万4千人。
アメリカの100分の1。
これで世界のリーダーになろうとか、日本の通貨である円を国際通貨にしようと言ってもそれは虚しい。
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